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ジャーナリストが学ぶべき、ソーシャルメディアの使い方。

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以前、日経ビジネスの私のコラムに
「記者160万人革命」~フェイスブックで報道が変わる という記事を書きました。

この記事では、フェイスブックとジャーナリズム(報道機関)を軸にしています。
報道機関がフェイスブックを使ってトラフィックを増すことが重要になっていますので、
報道機関は、ファンをつくり、動画や写真の使いながらフェイスブックを活用していかなければ生き残ることができなくなるという内容です。

この記事は4月にパロアルトにあるFacebook本社で行われたミートアップ(というより講義)に基づいて書きました。
記事では軽くしか触れませんでしたが、私はそこで別のことに衝撃を受けたのです。

それはソーシャルメディアが普及した後のジャーナリストはどう振舞うべきかというテーマです。

フェイスブックが言うにはは個人ページをきちんとつくり、自分の記事の紹介はもちろん、
記事のこぼれ話や、自分の気になった記事をそこで紹介するべきだというのです。
もちろん自分の読者が話しかけてきたり、質問を投げかけたりすることもあります。
それに全部とは言わないまでも、読者とのコミュニケーションを忘れるなというアドバイスもありました。

実際にアメリカでは、ニューヨークタイムスの名物記者ニコラス・クリストフや元ニューズウィークの国際版編集長ファリード・ザカリアなど、有名記者は自分のフェイスブックページやツイッターを持ち、
会社の記者という位置づけではなく、個人のジャーナリストとして発信しています。
フェイスブックが紹介している事例が気になる人は、こちらを見てみてください。

私はこれを聞いたとき、かなり衝撃を受けました。
後戻りできないシフトチェンジが起こったと思ったからです。

今まで、記者・ライターは雑誌に名前を載せているだけで許されました。
特に社員記者は、色々と自分のプロフィールを見せなくても、
「●●新聞社の加藤靖子」「●●出版社の加藤靖子」という、
確立されたブランドで働く個人という位置づけでよかったのです。

しかし、ソーシャルメディアが普及してくると、会社のブランド傘下にある自分というのは成り立たなくなっています。
個人として何を考えているのか。どんな活動をしているのかがより重要になってきます。

フェイスブックとしてはユーザーの滞在時間が長くなりますので、
フェイスブックのプロモーションとうがった見方もできます。
しかしこれはフェイスブックだけに限らず、ツイッターでも、Google+でも、
ソーシャルメディアがある限り、この普遍的な事実は変わらないでしょう。

以前知り合いと話しているときに、
「今の若い人は、人が何をやっているかとか、何を考えているか知りたい、
そして自分がやっていることも見てもらいたい欲求がある」

ということを言われたことがあります。
たしかそういう記事も見た記憶があります。

でも、私はそれちょっと理解が違うのではないかと思うのです。
今まで芸能人のゴシップをテレビを見ていたのも、
リアリティーショーで芸能人、一般人の生活をのぞいていたのも同じで、
人の生活、考えていることを知りたいという欲求は昔からあったと思うんです。

そこにソーシャルメディアが現れて、
芸能人や有名人レベルでなくても、個人のことをもっと知ることができるようになった。
そうなると芸能人は昔、「雲の上のひと」というポジションだったのが、
自分たちと同じレベルまで降りてくることになりました。

そこで何が起きたかというと、消費者が下から芸能人、企業、メディアを眺めることがなくなって、
もっと対等な「共感すること」に価値を見出すようになったと思うんです。

記者の話に戻ると、今まで一方的に記事を書いていればよかったのですが、
そうではなくなっている。
もっと読者に寄り添った姿勢が求められるようになったんですね。

もちろん、これは記者にとって簡単なことではありません。
アメリカ人は日本人よりも個人のことをオープンにすることに寛容といわれています。
それでもフェイスブック本社の講義では、

「記者のプライバシーはどのように守ればいいのか?」とか、
「誹謗中傷などのコメントはどれくらいくるのか?」
とかいう質問が飛び交っていました。

会場のなかで、記者として個人名でブログをやったりフェイスブックをやったりしているのは、
半分強くらいなんじゃないかなという印象でした。

私個人のことを考えても、個人で出て行くというのは簡単なことではありません。
それでも、ソーシャルメディアが普及する限り、この流れは不可避だと思っています。

これは記者に限らず、ほとんどの業種の人に言えるのではないでしょうか。
かなり衝撃を受けた事実ではありましたが、きっとこのトレンドも変化を遂げながら定着していくと考えています。



# by katoyasuko | 2011-11-23 04:30 | 働き方

人気コメディーをネットフリックスで独占放送

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人気コメディー「アレステッド・ディベロプメント」がネットフリックスで独占放送すると報じられました。
ウォールストリートジャーナルの記事はこちら

アレステッド・ディベロプメントは、2003年から2006年までケーブルテレビで放送されていた、人気コメディーです。
どちらかというと、コアなコメディーファンに好かれるタイプのもので、
日本人が好みそうな感じではないですが、
とにかくこちらではお気に入りの番組として挙げる人も多いのです。

2006年に放送がキャンセルされていたのですが、
なんとネットフリックスがコンテンツを買い、新シリーズを10話ほどを独占放送することになりました。
放送といってもオンデマンド動画ですが。

通常は放送が終了したコンテンツを買って放送していましたが、
ケーブルテレビと同じく、ネットフリックスが最新のコンテンツを抱え込むかたちになります。

ネットフリックスがコンテンツを買って独占で放送するのは今回が初めてではありませんが、
もともと人気があった番組なだけに、ファンの間ではツイッターなどで喜びの声が上がっています。

先のブログで、アメリカでケーブル放送を解約する「コードカット」の動きが進んでいるとお話しました。
このようにネットフリックスが独自コンテンツも拡充させることによって、
ますます多くの人がケーブルを必要ないと感じるようになるでしょう。

そもそも、ケーブルは月に大体100ドル近く払わないといけません。
その代わりどんな番組でも見れますよというコンセプトだったのですが、
そんなに番組は見れないし、好きな番組の料金を払いたいという人は多かったはずです。

今のところネットフリックスはオンデマンドとDVDのレンタルをあわせても月16ドルです。
オンデマンドでいつでも見たいときに見れるというのも、
今の消費者のニーズに合っています。

ちなみにアレステッド・ディベロプメント1話につき、ネットフリックスが支払うのは300万ドル(約2400万円)といわれています。
10話だと2億4000万円になるので、安い買い物ではありません。
しかし、これで新規会員を獲得することを狙っているようです。

現在ネットフリックスは会員が2500万人以上です。
コンテンツも高額なため、この先オンデマンドコンテンツを拡充するのに、会費の値上げをする可能性は大きいと思いますが、
やはり手軽だと思える会費を維持するのには、規模のメリットを拡大していくしかないでしょう。

先のビジョンがある会社なのですが、
ネットフリックスは今年の夏、会費を8ドルから16ドルに急に値上げをして、
大ひんしゅくをかっています。
先進的なことをしなければという気持ちが前のめりになり、
すっかり会員のケアを忘れていたようです。
クレームも相次いで、かなりメディアから叩かれた…ということもありました。
ですので、値上げをするにしても前回のようなことはまぁないでしょう。

オンデマンドでどこまで快適なサービスを提供できるのか。
時間は掛かりそうですが、非常に楽しみです。



# by katoyasuko | 2011-11-22 10:12 | メディア

AP通信の記者、ツイッターを優先して怒られる。

BBCの、"Associated Press reporters told off for Twitting"という記事です。

AP通信の記者、ツイッターを優先して怒られる。_b0240015_5111970.jpg

今ニューヨークで起きているウォール街占領デモに関して、
自社で速報を流す前に、ツイッターに流してしまい、数名の記者が上司に怒られたとのこと。

もちろんアメリカのメディアはツイッターをかなり多用しているんですが、
メディアは自分のサイトに来てもらわないといけないので、この件から使い方はまだ及び腰と言えるでしょう。

APの場合、”速報になるような情報、写真、動画がある場合は、ソーシャルメディアに流す前に、Wire(ネット)に先にアップすること”というルールがあります。
その他のメディアもソーシャルメディアの利用に関して、
厳格なルールを作っているようです。

しかし情報を受ける側として考えてみると、
やはり速報は早くないと意味がない。記者が急いで記事を書いて、
デスクを通して、さらにネットにアップして…というのを待っているよりも、
その手の速報はたとえ断片的であってもすぐに欲しいはずです。

速報が必要な場合、特に東日本大震災のような、非常事態が起こったとき、
アメリカの視聴者は今どのメディアに行くのでしょうか?

ここアメリカでは、ケーブル加入者が非常に多く、逆に言えば地上波だとろくな番組が見れません。
2009年の時点でケーブルテレビの加入割合が49%を越えています。
しかし今、「コードカット」という言葉が生まれており、つまりケーブルテレビの解約者が、ネットに流れているというトレンドがあります。
既存のケーブルテレビ加入者はBBC やCNN など速報に強いメディアがあるので、
それを流して情報を得るとして、非ケーブル加入者の情報源はネットになるはずです。
もうひとつ、アメリカは車社会でNPRといったラジオを流しっぱなしにしている人が多いので、
そこからの情報源もあると思います。

ネット利用者に関しては、大災害や大事故が起こったとき、
日本と同様にネット利用者はかなりツイッターに流れるでしょう。
そんなとき、大手のメディアが自社のネットにアップするのを待ってから、ツイッターに流しても、
前述のように、あまり意味がないはずです。

というよりも、ユーザーには腐ったニュースとして、見てももらえなくなってしまう可能性があります。
ニュースを流せるのは、大手メディアだけでなくなったのですから。
記者を叱っている場合ではないのでは?と思うのです。



# by katoyasuko | 2011-11-19 05:17 | テック

ジャーナリスト加藤靖子のブログです。ニューヨークで日経ビジネス勤務を経て、フリーに。シリコンバレーから、テック情報を書いています。メールはmail@yasukokato.com 。Photo:Takahiko Marumoto
by katoyasuko

Profile

加藤靖子。1982年9月11日東京生まれ、九州育ちの29歳。
中央大学在学中から、マガジンハウスの編集部アルバイトに明け暮れる。卒業後米Pace大学に留学。在学中にジャーナリストのアシスタントをしながら、フリーで原稿を書き始める。
卒業後、2007年末から日経BP社ニューヨーク支局勤務。ビジネス・経済誌「日経ビジネス」編集部で、大統領選挙、金融危機、自動車産業の低迷などをレポートし、刺激的な日々を送る。
2011年からサンフランシスコ郊外、シリコンバレーに引越し。フリーになり、「日経ビジネス」「日経デジタルマーケティング」などに記事を寄稿。
最近はすっかりテック系ニュースに目覚め、シリコンバレーでテック系イベントに出席したり、インタビューを行ったりしている。
最近のインタビューは、シェリル・サンドバーグ(Facebook COO)、ナビーン・セバデュライ(Foursquare共同創業者)、ガ・ワン(Smule共同創業者)など。

好きなことは料理、体を動かすこと、友達としゃべること、ファーマーズマーケットに行くこと。
仕事とプライベートをあまり区別せず、楽しく仕事をしています。

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