真の貴族とは、ノマドであること
サンフランシスコのDe Young(デ・ヤング)美術館でふらふらとアートを見ていたのですが、展示されている作品の合間に、素敵な言葉を見つけて思わず見入ってしまいました。展示されていたのは、アナトリアキリム。現在のトルコ東部に位置する、アナトリアと呼ばれた地域で、遊牧民が敷物として編んだ織物です。織物はお金に変えたり、家紋としても使われていたもので、カラフルで美しい柄は今でもデザインのモチーフとして見る事が多くあります。そんな美しいキリムと共に掲げてあった言葉がこちら。
"True aristocracy is being a nomad; those who settle lose thier lineage." Yoruk Proverb
「真の貴族とは、ノマドであること;定住する者は血筋を失う」ーユリュック族のことわざ
この、アナトリア地域で生活していたのは東西移動しながら生活したユリュック族と呼ばれる人達です。ユリュックとはアナトリアで遊牧民のこと。このことわざから、彼らが誇りにしていたのが、移動しながら暮らすノマド(=遊牧民)の生活であったことが分かります。つまり彼らは遊牧民であることで、住む場所を常に変え、物事を学習し、それに適応しながら生活することが家系のルーツであった。それは学びの多い真の貴族とも言え、定住してどこかに落ち着いてしまう人は、その学習や適応という家系のルーツを失ってしまうという事でしょう。
■ノマドの意味
日本では「ノマド」という言葉をITジャーナリストの佐々木俊尚さんが広め、さらに時代感にぴったりだったというのもあり、独自の意味合いに発達しています。ノマドとはもともと遊牧民の事ですが、佐々木さんも「はっきりとした定義はなくていい」と仰っていますし、独自の和製英語として使っていけばいいのではないかと思っています。
ユリュック族のことわざを読んで、是非彼らの遊牧民の意味合いも自分の「ノマド」の意味合いに加えたいなと思いました。私たちも仕事や、住む場所、組織やグループに同じ形で長く留まれば、何か新しいものを見ることを忘れてしまいがちになります。例えばそれが文化や私たちのルーツを知る事の妨げになることもあると思うのです。つまり、どこかに務めているとかフリーだというのではなく、旅に出たり、惰性でやっていることから脱却することで、物事を新しい側面から見る事ができること。旅に出て、自分の文化を知り、新しいやり方で物事を見てみることで、そのものの本質を考えるようになるといったことと共通すると思います。
季節や土壌によって生活用具と共に移動するユリュック族の生活は過酷だったと想像できます。しかし多くを学び、適応してきたからこそ遊牧民は豊かな文化を持つ、本当の貴族なのだと言えたのではないでしょうか。
※写真はDe Young に展示のアナトリアキリム
De Young美術館のアナトリアキリムの展示情報はこちらです。
Tribe official site -美しい手仕事キリム こちらのブログでユリュック族のキリムが紹介してありましたので興味のあるかたはこちら
by katoyasuko
| 2012-02-03 18:14
| 働き方
ジャーナリスト加藤靖子のブログです。ニューヨークで日経ビジネス勤務を経て、フリーに。シリコンバレーから、テック情報を書いています。メールはmail@yasukokato.com 。Photo:Takahiko Marumoto
by katoyasuko
Profile
加藤靖子。1982年9月11日東京生まれ、九州育ちの29歳。
中央大学在学中から、マガジンハウスの編集部アルバイトに明け暮れる。卒業後米Pace大学に留学。在学中にジャーナリストのアシスタントをしながら、フリーで原稿を書き始める。
卒業後、2007年末から日経BP社ニューヨーク支局勤務。ビジネス・経済誌「日経ビジネス」編集部で、大統領選挙、金融危機、自動車産業の低迷などをレポートし、刺激的な日々を送る。
2011年からサンフランシスコ郊外、シリコンバレーに引越し。フリーになり、「日経ビジネス」「日経デジタルマーケティング」などに記事を寄稿。
最近はすっかりテック系ニュースに目覚め、シリコンバレーでテック系イベントに出席したり、インタビューを行ったりしている。
最近のインタビューは、シェリル・サンドバーグ(Facebook COO)、ナビーン・セバデュライ(Foursquare共同創業者)、ガ・ワン(Smule共同創業者)など。
好きなことは料理、体を動かすこと、友達としゃべること、ファーマーズマーケットに行くこと。
仕事とプライベートをあまり区別せず、楽しく仕事をしています。
Yasuko Kato's About Me page
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