Pink Tech シリコンバレー

若者はどこへ行くーアメリカの若者は移住を計画

 投資週刊誌バロンズのオンライン版で「The Great Escape」(若者たちの大脱走)という記事が出ており、すごく興味深く読みました。日本のWSJでも公開されていたのですが、有料会員のみの記事なので、もし英語でも読みたい人はこちらを読んでみてください

 アメリカの経済が低迷する中で、アメリカの若者たちがよりよい機会を求めて、海外へ移住を希望する人が増えているというのです。調査会社、American Waveが行った調べによると、2005年から2007年の間で、移住を計画していると回答した人は、平均で1.4%。その後2009年の金融危機後に行った調査では、移住を計画している人は0.8%まで下落しました。筆者は、この時期アメリカ人はリスクをとらず、保守的な姿勢をとる人が増えた結果だろうと分析しています。そして2011年、移住を計画している人は2.5%にまで上昇しました。

 筆者によると数字を押し上げる要因になったのが、25歳から34歳までの年齢グループで。5.1%が移住を計画していると答えています。この層は、アジア、ラテンアメリカなどへ興味を示していて、仕事とエキサイティングなことを見つけられるのであれば、どこへでも行くという姿勢だったそうです。また、今崖っぷちのヨーロッパにはあまり興味がないと答えています。ちなみに18歳から24歳のグループですが、まだ学校に通っていたり、大学を卒業したものの景気の低迷で仕事を見つけられなかったりと、まだ意気消沈している状態。移住の計画を立てられる状況ではないと解説しています。ただこのグループも、移住に興味はあるという結果がでています。

 「アメリカンドリーム」はもう消えたと言われて久しいですが、やはり瞬発力のある若い層から移住を選択肢に加えています。今までの流れとして、アメリカへの移民の数が下落していることは様々なメディアで指摘されていました。私自身も2009年だったか、移民が減っており、アメリカがその輝きを失いつつある…という記事を書いたことがあります。長い間、有能な人材を集めることができていたアメリカでしたが、その求心力はどんどん弱くなってきています。

 さて、この記事の筆者は66歳だそうで、最後のまとめとしてこんなことを書いています。「私たちの世代は、負債という大変な重荷を次の世代に残してしまった。もちろん若い人たちはニュースを読んで、大きな債務があるということに気づいている。しかし、もし彼らが望めば、アメリカを世界経済で成功に導くために手助けをしてくれるかもしれない。でももし若者たちが、今後アメリカを助けるのではなく、債務を見捨てて機会を見出すためだけに移住してしまったら?」という風に書いています。

 この問いかけは、日本の状況にも共通するのじゃないかなと思います。今日本では、「若者は内向き志向」という定説が実は間違いだったということが徐々に語られています。詳しい資料はリクルートさんのものとか
My Life After MIT Sloanのブログ
で議論されているので、興味のあるかたは読んでみてください。

 日本人がアジアへの留学するケースも増えているようですし、やはり、若い人がより良い機会を求めて移住するというのは、万国共通のようです。「もっと外を向け!!グローバルで活躍できる人材に!」と叫ばれています。もちろん内需がしぼんでいるので、海外で富を生み出して、日本に恩恵をもたらしてくれる人の育成は欠かせません。しかし海外に行った後、そこが魅力的な場所であれば、日本に背を向けてしまう人が増えるということも考えられるのです。

 日本ではグローバルな人材が働きたいと思うような環境はまだまだ整っていないように思います。My Life After MIT Sloanのブログでおしゃっている通り、留学した人たちは、日本の就職活動のシステムの中で不利に立たされることが多いです。

 また、恵まれた環境からシリコンバレーで起業したいという若い日本人も増えているようです。シリコンバレーで起業すれば、最初から世界を見据えて展開するわけですし、素晴らしいことです。しかしながら本来なら、日本でもグローバルなサービスや技術を生み出すような起業家が生まれるよう、環境を整えてあげるのが理想だと思います。今のところ日本では失敗した人に対して非常に厳しい風潮があるので、起業するのもこちらのようにいかないようです。

 「内向き」とか「元気がない」とか何かと叩かれることの多い若い世代ですが、Great Escapeの筆者が言っているように、国債や年金を見捨てて移住してしまう可能性だってあるわけです。アメリカの若者は、すでに移住という選択肢を考えはじめています。日本が優秀なグローバル人材をひきつける求心力を持つことも、今後の課題になるんじゃないでしょうか。
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by katoyasuko | 2011-12-06 09:47 | 働き方

ジャーナリスト加藤靖子のブログです。ニューヨークで日経ビジネス勤務を経て、フリーに。シリコンバレーから、テック情報を書いています。メールはmail@yasukokato.com 。Photo:Takahiko Marumoto
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加藤靖子。1982年9月11日東京生まれ、九州育ちの29歳。
中央大学在学中から、マガジンハウスの編集部アルバイトに明け暮れる。卒業後米Pace大学に留学。在学中にジャーナリストのアシスタントをしながら、フリーで原稿を書き始める。
卒業後、2007年末から日経BP社ニューヨーク支局勤務。ビジネス・経済誌「日経ビジネス」編集部で、大統領選挙、金融危機、自動車産業の低迷などをレポートし、刺激的な日々を送る。
2011年からサンフランシスコ郊外、シリコンバレーに引越し。フリーになり、「日経ビジネス」「日経デジタルマーケティング」などに記事を寄稿。
最近はすっかりテック系ニュースに目覚め、シリコンバレーでテック系イベントに出席したり、インタビューを行ったりしている。
最近のインタビューは、シェリル・サンドバーグ(Facebook COO)、ナビーン・セバデュライ(Foursquare共同創業者)、ガ・ワン(Smule共同創業者)など。

好きなことは料理、体を動かすこと、友達としゃべること、ファーマーズマーケットに行くこと。
仕事とプライベートをあまり区別せず、楽しく仕事をしています。

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